テレビCMをアニメで作るときに知っておくこと|制作費と放映費、考査・尺・納品形式

\ 企画・シナリオ構成から一貫してお任せ /
アニメーション制作のご相談はこちら地方局でアニメのテレビCMを流そうと、制作会社に見積もりを頼む。「制作費はおよそ50万円です」と返ってきて、その金額を社内で通した。ところが、いざ放送の段取りに入ると、その50万円では1秒も電波に乗らないことに気づきます。
テレビCMの費用は、動画を「作る」お金(制作費)と、電波に「流す」お金(放映費)の二階建てだからです。さらにテレビには、Web動画にはない関門がいくつもあります。放送してよい内容かを調べる考査、決められた尺(15秒・30秒)、そして局に素材を渡すときの納品形式。ここを知らずに進めると、「完成したのに放送に間に合わない」が起こります。
この記事では、一般的な動画制作の工程ではなく、テレビCMならではの段取り——制作費と放映費の関係、考査、尺、納品形式——を、アニメーションで作る前提で整理します。読み終える頃には、放送日から逆算して「いつまでに何を決めればいいか」が見えるはずです。
目次
テレビCMの費用は「制作費」と「放映費」の二階建て

最初に、ここだけは押さえてください。テレビCMにかかるお金は、大きく2つに分かれます。
- 制作費 — CMそのものを作る費用。企画・絵コンテ・アニメーション制作・ナレーション・音楽など
- 放映費 — 完成したCMをテレビ局の電波に乗せる費用。放送する局・時間帯・回数で決まる
Web広告の感覚だと「動画を1本作れば終わり」に思えますが、テレビは作ったあとに、流すための費用が別にかかります。しかも、ある程度の回数を流そうとすると、放映費が制作費を上回ることも珍しくありません。
もうひとつ、発注の窓口も分かれます。制作は制作会社、放送枠の手配は広告会社(広告代理店)が窓口になるのが一般的です。テレビ局側の手続きも、広告主・広告会社・局の営業担当の三者でやり取りして発注に至る流れになっています。粕田屋のようなアニメーション制作会社に頼めるのは①の制作で、②の放送枠は広告会社や局とのやり取りになります。「作る相手」と「流す段取りをする相手」が別になりうる、と最初に知っておくと混乱しません。
アニメでテレビCMを作る制作費の目安
まず制作費から。アニメーションのテレビCMは、一般的に実写より制作費を抑えやすいとされています。理由は単純で、俳優のキャスティング・ロケ地の手配・撮影スタッフといった「当日まとめてかかる費用」が発生しないからです。
一般的な相場とされている金額を、作り込みの度合いごとに見ると次のとおりです。
| 作り方 | アニメCM制作費の目安(一般的な相場) |
|---|---|
| 既存の素材・図形を動かす簡易なもの | 10万〜30万円前後 |
| シンプルなオリジナル作画 | 30万〜80万円前後 |
| キャラクター設計から描き起こすもの | 80万〜150万円前後 |
| ブランディングまで作り込むもの | 150万〜300万円前後 |
同じ15秒でも、金額は大きく変わります。金額を動かすのは尺そのものより、「どこまでゼロから描き起こすか」「キャラクターを登場させるか」「動きをどこまで作り込むか」です。この構造は、別記事「動画制作の費用は何で決まるのか」で詳しく書いたとおりで、テレビCMでも同じです。
ちなみに、実写を含むテレビCM全体では数百万円規模になることも多く、アニメはその中で比較的コントロールしやすい側に入ります。
放映費はどう決まるのか|スポットCMとタイムCM
次が、テレビCMで一番わかりにくい放映費です。放送の買い方には、大きく2種類あります。
スポットCM
番組の提供とは関係なく、期間とエリアを決めて、複数の番組の間などの枠に流す買い方です。2週間〜1ヶ月ほどの短期集中に向きます。料金は「15秒1本いくら」ではなく、延べ視聴率(GRP)をどれだけ積むかで決まるのが基本です。
タイムCM
特定の番組のスポンサーになり、その番組の中で流す買い方です。2クール(約6ヶ月)単位での契約が基本(番組によっては1クール=約3ヶ月も可)で、売られる最小単位は30秒です。番組の視聴者層に継続して届けたいときに向きます。
金額の目安として、スポットCMを15秒1本あたりに換算すると、キー局(関東)は30万〜100万円程度、地方局は数万円〜十数万円程度が一般的な相場とされています。局と時間帯で大きく変わり、情報源によっても幅があります。
ここで出てくるGRP(延べ視聴率)は、流したCMの視聴率を合計した数字です。目安として、ビデオリサーチの公表データでは、1,000GRPを投下したときのCM認知率は平均で約34%(個人15〜69歳)とされています。どれだけ積むかは、エリアと目的で決まります。
重要なのは、放映費は制作とは別に、放送する局・エリア・期間ぶんだけ毎回かかるということ。冒頭の「制作費50万円では1秒も流れない」はこの意味です。予算を組むときは、制作費と放映費を最初から分けて考えてください。
尺は15秒か30秒か|テレビは「規格」が決まっている
Web動画は尺が自由ですが、テレビCMの尺には標準があります。主流は15秒と30秒です。民放連の放送基準では5秒・10秒・15秒・20秒・30秒・60秒が標準として示され、それ以外の長さは各局の扱いになります。実際の売り方も、スポットは15秒単位、タイムは30秒単位が基本です。
さらに、同じ15秒でも映像の長さいっぱいまでナレーションを入れられるわけではありません。民放連の放送基準では、尺ごとに音声の長さと音節数の目安が示されています。
| 尺 | 音声(ナレーション・BGM・効果音)の長さ | 目安の音節数 |
|---|---|---|
| 15秒CM | 音声14秒以内 | 約84音節 |
| 30秒CM | 音声29秒以内 | 約174音節 |
出典:日本民間放送連盟 放送基準 第(150)条。音声が14秒(29秒)までなのは、民放連の「テレビCM素材搬入基準」で「CMの頭と終わりの各0.5秒を無音にする」と決められているためです。
「言いたいことが入り切らない」は、テレビCMで必ずぶつかる壁です。だからこそ、情報を1つずつ順番に出せるアニメーションは、短い尺と相性がいいとも言えます。実写で一度に映り込む情報を、アニメなら「いま見てほしいところ」だけに絞って見せられるからです。
音量にも基準があります。CM全体の平均の音の大きさ(ラウドネス)を−24.0LKFSに合わせることが目標で、運用上の許容範囲は±1dBです。大きすぎる素材は作り直しになり、搬入時には測った値の記入も求められます(民放連技術規準T032 運用ガイドライン)。音の仕上げ(MA)は、テレビ納品では省けない工程です。
考査|放送してよい内容かを、局がチェックする
テレビには、Web広告にはない関門があります。考査——放送してよい内容かを、CMを流す各テレビ局の考査担当が、民放連の放送基準と各局の基準に沿って事前に審査する仕組みです。考査は大きく2種類あります。
- 業態考査 — その会社・その業種が、そもそも放送してよいかの審査。初めてその局に出す会社が対象で、登記簿(履歴事項全部証明書)や会社案内などを提出します
- CM表現考査 — CMの中身(表現・言い回し・見せ方)が基準に合っているかの審査
かかる期間は局や業種で大きく異なりますが、広告会社の解説では、業態考査が2週間〜3ヶ月程度、表現考査が1週間〜1ヶ月程度が目安とされています。初めて取引する局ほど長くなりがちです。この期間を見込まずにスケジュールを組むと、完成しても放送に間に合いません。
特に、次のような業種は書類や事前審査が必要で、時間がかかりやすいとされています。
- 医療・クリニック、不動産、金融 — 許認可や免許の確認が必要です(許認可が必要な業種で許認可のない広告主のCMは扱わない、と放送基準に定められています)
- 貸金業 — 日本貸金業協会の会員が個人向けローンのCMを出す場合は、協会の広告出稿審査を受け、CMに「貸金業協会考査承認番号」を表示する必要があります
もうひとつ、アニメならではの決まりもあります。NHKと民放連の「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」で、光の点滅は原則1秒間に3回まで、鮮やかな赤の点滅は特に慎重に、画面の大部分を占める縞模様などは避ける、とされています。派手な演出を入れたいときほど、絵コンテの段階で確認しておくと安心です。
アニメーションには、この考査で有利な面があります。実写だと表現の修正に再撮影が必要になりがちですが、アニメは「この言い回しを直す」「この表現を変える」が、該当カットの作り直しで対応しやすい。考査で指摘が入ったときの戻しが軽いのは、アニメの実務上のメリットです。
納品・搬入形式|完成したあとに必要な手続き
CMが完成したら、それをテレビ局が放送できる形で「搬入」します。ここにもテレビ特有のルールがあります。中心になるのが、日本民間放送連盟(民放連)の「テレビCM素材搬入基準」(2023年2月改訂版・2023年4月適用)です。多くの局がこれに準じています。
- 10桁CMコード — 放送するCM素材には、1素材につき1つのコードが必要です。前半4桁は広告主ごとに「共通コード管理センター」が発番するもの(広告主の名義で申請します)、後半6桁は広告主が素材ごとに付けるものです。コードは素材の中の表示やファイル名にも入るため、制作の途中で決めておく必要があります。付番されていない素材は放送できません
- 搬入の締切 — 一般的な基準では、素材は「放送日を含まない4日前まで」に搬入します。土日祝をはさむ場合は、その日数ぶん繰り上がります(年末年始・GWは局ごとに別途)
出典:日本民間放送連盟「テレビCM素材搬入基準」(2023年2月改訂版)
では、局に渡す「素材」とは何か。Web用のMP4ではなく、放送用の形式のファイルです。民放連の基準では、HD(1080i)の映像をXDCAM方式のMXFファイル(MPEG HD422 50Mbps)にし、冒頭にカラーバーやクレジット(広告主名・素材名・10桁CMコード・秒数など)を入れた決まった構成で作ります。そこに素材情報を書いたデータ(XML)を添えて渡します。渡し方はオンライン搬入か、XDCAM用ディスクが中心で、どちらに対応しているかは民放連「テレビCM関連資料」で局ごとに公開されています。「Web用に書き出した動画」では放送できないので、制作会社には最初から「テレビ納品用の素材まで作れるか」「どこまでを誰が担当するか」を確認してください。
考査での修正や搬入の余裕を見て、放送の1ヶ月ほど前には素材が仕上がっているのが実務上の目安です。
Web動画なら「完成=公開」ですが、テレビは完成してから、コード取得・考査・搬入という手続きが残る。この最後の数日〜数週間を見込んでおくことが、放送日を守るうえで一番大事です。
放送日から逆算する|いつまでに何を決めるか

ここまでをつなぐと、放送日から逆算したおおまかな段取りが見えてきます。目安として整理します。
- 放送の3ヶ月以上前|広告会社に相談し、放送枠と考査の段取りを始める。初めてテレビCMを出す会社は、この段階で業態考査に入る。共通コード管理センターで広告主コードも申請しておく
- 約2〜3ヶ月前|企画・絵コンテを固め、絵コンテの段階で表現の確認を受ける
- 約1〜2ヶ月前|アニメーション制作、ナレーション・音の仕上げ(MA)。完成したら素材の考査を受ける
- 約1ヶ月前まで|修正を反映して素材を仕上げ、放送用ファイルにする
- 放送日の4日前まで|局に素材を搬入する(放送日を含まず、土日祝をはさむ場合はその分繰り上げ)
この逆算をせずに「放送したい日」だけ先に決めてしまうと、考査や搬入の時間が足りず、放送がずれ込みます。逆に、放送日が決まっているなら、そこから3ヶ月以上前に動き出すのが安全です。キャンペーンや新商品の発売に合わせたい場合は、特に早めの相談をおすすめします。
粕田屋に頼める範囲と、プランの対応
粕田屋はアニメーション専門の制作会社なので、お手伝いできるのは①の制作(企画・絵コンテ・アニメーション・ナレーション・音の仕上げ・考査に向けた表現の調整)です。②の放送枠の手配は、広告会社や局とのやり取りになります。放送用ファイルへの書き出しなど納品まわりをどこまで粕田屋で担うかは、案件ごとに広告会社と分担を決めます。「どちらをどこに頼むか」から整理したい段階でも、ご相談いただけます。
制作費の考え方は、サービスページのプランと対応しています。
| プラン | 価格 | テレビCMでの使いどころ |
|---|---|---|
| ライト | 5万円〜 | 既存の素材・図形中心の簡易な15秒。まず試したいとき |
| ベーシック | 50万円〜 | オリジナル作画のアニメCM。キャラや世界観を描き起こす中心帯 |
| プレミアム | 120万円〜 | 作り込みと修正回数を気にせず詰めたいCM・ブランディング |
これは制作費のみで、テレビ納品用の仕上げを含めるかどうかで見積もりは変わります。放映費は、放送する局・エリア・期間に応じて別途かかります。見積もりを取るときは、「制作費」と「放映費」を分けて確認してください。
まとめ
テレビCMをアニメで作るときに、Web動画と違うポイントを整理します。
- 費用は制作費+放映費の二階建て。流す量によっては放映費のほうが大きくなる
- 放映費はスポットCMかタイムCMか、局・エリア・GRPで決まる。タイムCMは2クール(約6ヶ月)契約が基本
- 尺は15秒・30秒が主流で、音声の長さにも目安がある
- 考査(業態・表現)に時間がかかる。医療・金融・不動産・貸金業は特に早めに
- 納品には放送用の形式のファイル・10桁CMコード・放送4日前までの搬入が必要
アニメーションは、実写より制作費を抑えやすく、短い尺に情報を整理して乗せやすく、考査の戻しも軽い——テレビCMと相性のいい手段です。冒頭の「制作費50万円では1秒も流れない」という二階建ての構造さえ押さえておけば、予算もスケジュールも読み違えません。粕田屋では、放送日から逆算した段取りの相談から承っています。
この記事の監修者
企画から構成、グラフィック・イラスト制作、アニメーション制作、音楽・アフレコディレクションまでアニメ動画コンテンツ制作を一貫して担当可能なマルチクリエイター。
動画制作チームを組織し、幅広いジャンルのコンテンツ制作をディレクションしている。
関連記事一覧
-

動画制作の依頼書(オリエンシート)の書き方|1枚にまとめる項目とテンプレート
動画を作りたくて制作会社に問い合わせてみると、折り返しの連絡でいくつも質問が返ってきます。「どんな目的ですか」「誰に見せますか」「どこで流しますか」「ご予算は」。その場でうまく答えられず、言葉に詰まっ...
-

動画制作の社内稟議を通すには|決裁者が知りたい3つのことと説明の順番
制作会社から見積もりはもらった。作りたい内容も固まっている。あとは社内で承認をもらうだけ——そう思って稟議に出したら、「で、これをやると、いくら返ってくるの?」の一言で差し戻された。 動画の発注でいち...
-

テレビCMをアニメで作るときに知っておくこと|制作費と放映費、考査・尺・納品形式
地方局でアニメのテレビCMを流そうと、制作会社に見積もりを頼む。「制作費はおよそ50万円です」と返ってきて、その金額を社内で通した。ところが、いざ放送の段取りに入ると、その50万円では1秒も電波に乗ら...
-

サービス紹介動画をアニメーションで作る|形のないサービスを「見える」ようにする構成と費用の目安
新しく始めたサービスの紹介動画を作ろうと、まずは撮影の見積もりを取ってみる。ところが絵コンテを描き始めたところで気づきます。映せるものが、パソコンの画面と、それを操作する指しかない。 サービスの便利さ...
-

動画制作の外注で損しない進め方|素材・修正・スケジュールで納期と仕上がりが変わる
動画を外注したとき、こんな経験はありませんか。スケジュールがなぜか後ろにずれていく。上がってきた初稿が思っていたものと違う。修正のやり取りが何往復も続いて、気づけば当初の予定を大きく過ぎている。 「制...








